総合診療科

5 食物アレルギー

食物アレルギーとは、食べているものが原因で痒みが生じる疾患です。食物アレルギーには液性免疫IgEが関連する、食べて直ぐに痒くなる型アレルギー(即時型)と、細胞性免疫が関連する型アレルギー(遅延型)があります。

 食物アレルギーの症状は、犬アトピー性皮膚炎の症状と一致します。症状だけでこの2つを判断することは難しいです。しかし、食物アレルギーはアレルギー物質を食べることで起こりますので、食べている食物によって痒みを生じ、フードを変えない限り通年性の痒みを呈します。犬アトピー性皮膚炎は環境アレルゲンが原因ですので、季節性に症状が認められます。また、食事性アレルギーは消化器症状が生じやすいことがわかっております。例えば、下痢、嘔吐、しぶり、腹鳴、排便回数の増加などです。

検査

  • 除去食試験および負荷試験

除去食試験とはアレルギーを起こしにくい食事を与えて、症状が改善するかどうかを見る検査です。検査期間は8週間が推奨されており、この間はおやつやガム、チュアブルの予防薬も禁止になります。与えるフードはアレルギー市販食またはアレルギー調理食になります。

アレルギー市販食はアミノ酸まで分解されて作られているアミノペプチドフォーミュラー、または加水分解タンパクフードを用います。

アレルギー調理食は、今まで食べたことがない蛋白と炭水化物を合わせて作ります。例えば、蛋白としてはラム、魚、ウサギ、鹿、七面鳥、ダチョウ、アヒル、カンガルーなど、炭水化物としてはじゃがいも、サツマイモ、大麦、オーツ麦、かぼちゃ、えんどうまめを選択します。調理食を焼く/茹でるなどをした上で、蛋白と炭水化物を1:1の割合で混ぜる。量は5kgあたり1カップ(250ml)が1日の目安になります。体重の増加や犬の満足感に合わせて量を調整します。

負荷試験は、8週間の除去食試験で症状が改善した場合、今まで食べていたフードを与えて、症状が再燃するかを確認する検査です。通常1~2日以内に、遅くても7~10日以内に痒みの再燃が見られます。

  • アレルギー検査

アレルギー検査とは、アレルゲン特異的IgE検査、リンパ球反応検査のことで、これらの検査は1つの指標であって、食物アレルギーの診断としては推奨されていません。アレルギーの1つの指標として補助的な検査です。除去食の選択に迷う場合などに行います。

治療

食物アレルギーのみのアレルギー疾患なら、食事の変更で症状は改善いたします。しかし、アレルギー性皮膚炎は、食事だけのアレルギーはそれほど多くなく、ノミや環境アレルゲンによるアレルギーが混在している場合が多いです。犬アトピー性皮膚炎が混在している食物アレルギーの場合、食事コントロールとアトピー性皮膚炎の治療を行っていく必要があります。