総合診療科

2 犬の外耳炎

外耳炎は非常によく見られる病気の一つで、耳の耳介から鼓膜までの外耳道に炎症が起こる皮膚疾患です。症状は耳のかゆみ(首を振ったり、足で耳を搔いたり)や痛み、外耳道の炎症(赤くなる)、多量の耳垢、悪臭などが認められます。慢性化すると耳道が閉塞したり、鼓膜が損傷し中耳炎に波及したりします。中耳炎を起こし悪化した場合、頭を傾けたり、眼振(目が揺れる)、顔面神経麻痺などが見られます。

外耳炎は急激に悪化する急性外耳炎と長期に炎症が持続した慢性外耳炎に分かれます。慢性化してしまうと治りにくくなりますので、なるべく早の獣医師の診察をお受けください。

外耳炎を起こす原因としては、細菌、真菌、耳ダニなどの寄生虫、アレルギーがあげられます。

外耳炎の原因 (なんで外耳炎になったの?)

外耳炎の原因は基礎疾患と続発疾患に分かれます。基礎疾患とはもともとある原因で、続発疾患とは基礎疾患により2次的に起こる続発疾患です。

【基礎疾患】

  • 過敏症 :アトピー 食物アレルギー 接触アレルギー
  • 異物 :植物の実や綿棒の綿が入ってしまうことが多いです
  • 腫瘍 :耳垢腺腫 脂腺腫 形質細胞腫 など
  • 寄生虫 :耳ダニやニキビダニなど
  • 耳の構造的な異常 :垂れ下がった耳、耳道が狭い、耳道内に毛が生える
  • 耳垢腺の分泌異常 :ホルモンや代謝異常
  • 外傷 :不適切な耳洗浄や爪による損傷

【続発疾患】

  • 細菌感染
  • マラセチア感染
  • 中耳炎
  • 耳道の皮膚の肥厚、苔癬化、狭窄

もともと外耳道は自浄作用があり、出てきた耳垢などを外に押し出す作用があります。しかし、外耳炎の基礎疾患が悪化するとこで自浄作用が働かなくなり外耳炎が悪化します。

外耳炎は基礎疾患と続発疾患が混ざり合い複雑化しているため、しっかりとした検査が必要になります。特に慢性化している場合やすぐに再発してします場合は、なぜ起こったのかを診断し、基礎疾患のコントロールが重要になります。

基礎疾患として一番多いのはアレルギーで、アトピー、食事アレルギーのワンちゃんの80%に外耳炎の症状が認められ、耳にしか症状が認められないアレルギーも35%認められたとの報告があります。

外耳炎の検査

外耳炎は基礎疾患と続発疾患が複雑に混ざり合っていますので、外耳炎の原因を調べるためには検査が必要になります。

  • 耳鏡検査 :耳の構造、耳垢の性状、耳ダニの有無、鼓膜の状態、耳毛の異常や異物の有無を調べます
  • 耳垢検査(細胞診) :耳垢に細菌やマラセチア、炎症細胞、耳ダニ等がいないかどうか調べます。
  • 細菌培養検査 :耳の中の細菌が何なのか? どの抗生物質に感受性があるかを検査します。
  • オトスコープによる耳道検査 :細い内視鏡により耳道の奥や鼓膜の状態を詳しく観察します。
  • レントゲン検査 :内耳や中耳(鼓室包)の状態や外耳道の石灰化を調べます。
  • 血液検査 :ホルモンや全身状態の悪化から外耳炎の炎症に波及している場合は、全身状態を把握するために血液検査が必要になります。

外耳炎の治療

慢性外耳炎で耳介や耳道に苔癬化(皮膚が厚くなった状態)が認められる場合は、数週間から数か月の継続的な治療が必要になります。まずは外耳炎の続発疾患をしっかり治すことから始めます。苔癬化した皮膚はそれ自体にかゆみがあり、苔癬化が収まるまで定期的に治療を行い、良い状態を維持することが必要になります。

再発性外耳炎は、外耳炎がすぐに再発してしまう場合です。これは耳の中に細菌やマラセチアが増殖しやすい原因があります。先ほど挙げた基礎疾患によって起こると考えられます。

多くはアレルギーや耳の構造的な問題からの場合が多く、アレルギーではアレルギー食による食事コントロールやアトピーに対する治療が必要になります。耳の構造的な問題では、定期的な耳毛の除去などが必要になります。

ホルモンや全身状態の悪化から起こる外耳炎では、基になる疾患の治療が必要になります。

重度の慢性外耳炎の治療

慢性外耳炎が長期に続くと、外耳道が狭窄したり、外耳道の骨化(耳道が骨のように固くなる)が起こります。この状態になると内科的な治療は難しく、外耳道切開手術や耳道切除手術が必要になります。特にアメリカンコッカスパニエルに多く認められます。

 

このような状態にならないように、早めに治療をしていきましょう。