1 口腔内検査と歯石除去
口腔内検査と歯石除去
口腔内検査は大まかな検査は無麻酔下で検査可能ですが、歯周病の程度を診断する場合や腫瘍性疾患などは麻酔下にて行います。
歯周病は歯肉の炎症だけでなく、歯周組織の破壊程度を確認する必要があります。
具体的には、歯肉の炎症程度、歯垢歯石の付着程度、歯の動揺度、根分岐部病変の程度、歯周ポケットの深さ、アタッチメントロス(歯肉の後退)、および口腔内レントゲンを行う必要があります。
「歯石除去のみでよいのか?」「歯周外科処置が必要か?」「抜歯が必要か?」
これらの検査を行うことで、上記のような適切な処置を選択できるようになります。
歯石除去は口腔内検査の後、
①スケーリング⇒②ルートプレーニング⇒③ポリッシング⇒④局所軟膏注入
の順番で進められます。
- スケーリング
歯石除去(スケーリング)は基本的には麻酔下にて行います。全ての歯の口腔内検査後、超音波スケーラーにて全ての歯を丁寧に歯石を除去していきます。超音波スケーラーでは除去しきれなかった微小な歯石には鎌型スケラーを使用して除去していきます。
⇩ - ルートプレーニング
歯と歯茎の間の歯周ポケットの歯垢歯石をキュレットや歯肉縁下用チップをもちいて除去していきます。歯周ポケット内の歯垢中の細菌によりセメント質が凸凹になり汚染されてしまいます。この汚染されたセメント質を除去して滑沢な面にしていきます。
⇩ - ポリッシング
スケーリング後の歯の表面には細かい傷がついており、歯石歯垢が付きやすい状態になっています。特殊なブラシ(ポリッシングブラシ、ラバーカップ)を用いて歯の表面を研磨していきます。
⇩ - 局所軟膏注入
歯周病が重度である場合、歯科用抗生剤軟膏などを歯肉縁下に注入します。
抗炎症作用のほかに歯周ポケットの深さを改善する効果もあります。
歯石除去
左の写真は歯石除去前の写真です。茶色い歯石が歯に付着し、歯がほとんど見えません。
右の写真は歯石除去後の写真です。歯石が取れて白い歯が輝いています。
重度の歯石付着による歯石除去と抜歯
毎日のデンタルケアーを怠ると、徐々に歯垢歯石が歯の表面に付着していきます。歯垢歯石は細菌の温床で、歯肉に炎症や発赤を起こします。よりひどくなると化膿性分泌物が認められるようになり、歯の動揺がおこるようになります。
軽度の炎症の場合は歯石除去や歯周外科処置、内科療法で改善する場合がありますが、歯の動揺が著しい場合や外歯瘻や内歯瘻、レントゲンで歯根吸収が認められた場合や根尖周囲の重度の透過像が認められた場合には抜歯が必要になります。
上顎の重度の歯周炎
左の写真は重度に歯石が付着しており、歯肉の発赤、腫脹、化膿が認められます。
中の写真は上顎第4臼歯のレントゲン写真です。重度の歯根の炎症が認められます。レントゲンで歯根の周囲が黒く抜けて見えます。
右の写真は、切歯と犬歯以外はすべて化膿性の歯周炎を呈しており、全て抜歯が必要でした。抜歯後、歯肉を剥離し、歯があった溝を覆うように縫合しています。
下顎の重度の歯周炎
下顎臼歯の写真とレントゲン写真です。レントゲンで歯根が感染により溶けて吸収されています。